退院支援~高齢者が怪我をするという事

高齢者の多い地域密着型の病院の急性期病棟で働いています。病院には医療連携室がありますが、退院支援に専任する看護師はいないので病棟看護師が退院支援の中心です。日替わり担当の中、チームワークで患者や家族、ケアマネージャーとやり取りをして患者が地域社会に帰れるようかかわっています。

入院してくる高齢者は、脳梗塞や誤嚥性肺炎、腰痛で動けなくなった人、転倒して骨折した人…つまり歳を重ねて何かしら体の機能が落ちてきたことに由来するものが多いのです。まあ、病気というものの多くは加齢や生活に由来することが多いものですが、高齢になるとちょっとしたきっかけで病気や障害が起こりやすい。

しかし誰でもそうだと思うけど、年を取ってきたことは自覚していても、まだ大丈夫でしょう、もう少し元気でいられるでしょうと思っているので介護の準備なんてしていな人がほとんど。「もう私だって年なのよ、そのうちお世話になるかもね。まあ、あと何年こうやって歩けるかしらね、ホッホッホ」と言ったそばから転んで足を骨折して救急搬送。歩けなくなるのはあと何年ではなく、次の瞬間だったりする。今は100歳のおばあちゃんでも希望があれば手術をする時代、骨折して運ばれたおばあちゃんは必至でリハビリしつつも、なかなか骨折や手術の衝撃と数日といえど寝たきり期間のおかげでトイレに行くのもままならない。

でも患者の家族の多くはこう言います。「歩けるようになってもらわないと困る」「入院する前と同じに戻ってもらわないと困る」

わかります。確かに急に介護が必要と言われても困るでしょう。でも、本来急なことではないんです。「たまたま転んで骨折した、それまでは普通に暮らしていたんだから、手術して元に戻してくださいよ」…たまたま転んだんではなく、転びやすいほど体力は落ちていたんです。普通に暮らすのも歳を重ねれば難しくなります。入院しても手術しても日々歳をとるんです、元に戻ることは難しいのです…急に歳を取って転んだかのように受け止めて、手術したら転ぶ前の若さに戻るかのように要望する。でもその気持ちはわかります。そんな不幸なことが自分や家族の身に、今、起こるなんて思って暮らしていないですから。いつかはあるかもっていうくらいには思っていても。

70歳になろうと80歳になろうと、元気なうちから介護を受ける準備をしていない人がほとんどで、たいていの人は介護保険をどうやって利用したらいいか知らないことが多い。高齢者が骨折して入院した場合、私たちはその入院の手続きの日に「治療しても元の体力に戻れないことが多いので、入院中に介護の準備をしておいてください」と説明します。介護保険は申請してから使用できるようになるまで一か月かかります。患者がリハビリを頑張って、結果介護が必要なくなっても、介護の準備をすることは無駄にはなりません。どうせいつかは必要になるのですから。

でも、できるなら元気なうちから高齢者支援センターなどの機関に相談に言っておくことが望ましいです。特に単身高齢者や高齢者夫婦のかたは、何かあった時にすぐ相談できる準備をしておくのが安心です。離れて暮らすご家族がいる場合も同様です。

なかなか自分が高齢者であることを自覚するのは難しいですけどね。

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