認知症の初期?道迷いのおじいちゃん

道迷いのおじいちゃんに遭遇

先日ご近所を歩いていたら、すれ違うおじいちゃんに声をかけられました。

「ここはどこですか?家に帰ろうと思うんですが、通り過ぎちゃったのかな」と。

お話を聞いてみると、A駅の近くで買い物をして、B町にある自宅に帰るはずが道を間違えたのか知らない場所に来てしまったとのこと。私と遭遇したここC地点は、A駅からB町を超えておよそ2倍は歩いたであろう場所。たぶんお家を通り越して進んでしまい、道に迷ったのでしょう。「私のうちはね、B町3丁目の2なんです。サ⚪︎ダと言います」。

東京23区内なので、大抵の住所には何丁目何番地何号まで住所があります。

B町3丁目の2番ですね、その次は?・・・「サ⚪︎ダです」。・・・あれ?

B町3丁目の2、サ⚪︎ダ。それ以上の情報が出てこない。

身なりはきちんとしていて買い物袋も持っている。会話も比較的普通にできる。だがこれは、ただの道迷いではないらしい。それほど距離も遠くないし、タクシーが走っている場所でもない。幸いサ⚪︎ダさんは歩けている(若い頃はゴルフで鍛えたのだそうです)。B町3丁目2まで行けば、自宅の近くまで行けばわかるだろうと、一緒にB町3丁目の2を目指した。

結果は…そこにサ⚪︎ダさんの知っている景色はなく、「B町3丁目なんですよ、ここじゃないと思うんだけど・・・おかしいなあ」。住所の記憶は曖昧だったわけですね。サ⚪︎ダさんいわく、引っ越してきてまだ2年くらいなのでよく道に迷うのだとか。電話番号も引っ越してきたばかりでわからないのだとか。

結局辿り着けそうにないと思い、近くの交番に送り届けて事情をお話しし、あとはお巡りさんに託しました。

認知機能が低下してきた高齢者を守るには

認知機能の低下を早めにキャッチして、受診をしたり、生活環境を整えたりすることが大切です。でもはっきりと症状が出ないと受診のきっかけも難しい。だから、見守る目を増やすことって大事じゃないかなと思います。保護が必要な子供は、安心して自立するまではたくさん保護されていて、たくさんの目で見守られている。小さな子供が一人で出歩いていたらみんな気に留めますよね。でも、高齢者の場合はその逆で、だんだん保護が必要になってきます。助けが必要かどうか判断するのは難しいけれど、見守る目を増やすことはできると思います。高齢者なりの社会性やコミュニティを大事にしていくことはそのひとつ。知っている顔が多ければ挨拶もするし、気に留めてくれる人もいる。

道を歩いていても知らない人なら挨拶をすることもない都会の真ん中。ならば知っている人を一人でも増やしておく。あれ、様子がおかしいな?と、気づいていくれる人を増やしておく。ご近所の人もですが、高齢者が一人でいる時間を増やさないコミュニティ作り、そんなことが大事じゃないかな…と思いました。

「あれ?」と気付ける人になる

ご近所付き合いとか、コミュニティとか大事だと思います。でも24時間誰かが見ているわけにもいかないし、高齢者だって自由に外を歩きたいでしょう。

私の実家は東北のど田舎。村の人は皆顔見知りで、認知症のケがある梅バア(仮名)が家を出て歩いていると、気付いた近所の奥さんがまず「どこにいくの?」と声をかけます。梅バアは「はたけ」と答えると、近所の奥さんは畑の近くの奥さんに電話します。「梅バアがそっちにいくと思うから、見といて〜」。

サ⚪︎ダさんは普通に歩いていたので、私もそのまますれ違うところでした。ふと目が合った時、声をかけられたのです。声をかけてくれてよかった〜と思いました。田舎の奥さんのようにはいかなくても、あれ、大丈夫かな?と気に掛ける人が増えれば、それは一つの見守る目になりますよね。

若いころゴルフで鍛えたと言うサ⚪️ダさんの脚は、結構フラフラしていました。途中坂道は腕をとって介助しちゃいました。たぶん1時間は歩いていたでしょう。こうやって高齢者が転んで骨折するのか、とか、暑い日だったら熱中症で倒れただろうな、とか予測できます。声をかけてくれたから助けてあげられました(一応助けたつもり)。

過去にもおばあちゃんを保護したことがあります。真冬の夜9時くらい、パジャマに半纏を羽織って歩いているおばあちゃんが気になって、振り返ってみていたらキョロキョロしている。「どうしたんですか?」と声をかけたら「〇〇2丁目はどちらですか?」と。「ここが〇〇2丁目ですよ、どこまで行きたいんですか?」と聞くと「おうちです」と笑顔。もちろんすぐお巡りさん呼んで保護してもらいました。

高齢化社会、予防そして「準備」

高齢化社会、25年問題、健康寿命を伸ばそうといろいろな取り組みがされています。病気を予防し、寝たきりにならないよう運動を推奨したり、とても大事なことだと思います。

でも一方で、必ず歳をとり、歳を取れば体も脳も機能は低下していきます。健康でいるために、介護を必要としないために予防することはとても大事。それでも一生バリバリに元気でいられないのなら「準備」することも大事だと思います。認知機能が低下して生活に支障が出るかもしれない。それならコミュニティへの参加や近所付き合い、見守りサービスの検討や、地域包括への相談など、見守る目を増やしておくことはその準備の一つだと思います。道に迷い歩き続けることは、まだ徘徊とは言わないでしょう。でも徘徊するようになってからでは、ますます対応が難しくなります。

まだ大丈夫、という高齢者は多いでしょう。まだ大丈夫、でもいつかは必要、準備しておこうという心構えでいかがでしょうか。

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